大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

静岡地方裁判所 平成元年(行ウ)8号 判決

静岡県清水市幸町五番一二号

原告

清水港飼料株式会社

右代表者代表取締役

杉山房雄

右訴訟代理人弁護士

新里秀範

静岡県清水市江尻東一丁目五番一号

被告

清水税務署長 飯田静男

右指定代理人

浅野晴美

杦田喜逸

村上恒夫

原木壽郎

金川裕充

間瀬暢宏

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告が昭和六二年八月一〇日付けでした、原告の昭和六〇年七月一日から同六一年六月三〇日までの事業年度分法人税のうち、総所得金額一二億〇〇七七万一七二九円、納付すべき税額五億一九七三万五七〇〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定(但し、いずれも審査裁決により一部取り消された後のもの。)を取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告は各種配合飼料の製造販売を業とする会社であるが、昭和六〇年七月一日から同六一年六月三〇日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)の法人税について、被告に対し、別表一の確定申告欄記載のとおり確定申告をし、その後、同表の修正申告欄記載のとおり修正申告をしたところ、被告は、同表の更正処分欄記載のとおり更正処分及び重加算税の賦課決定処分をした。

そこで、原告は、被告に対し異議申立をしたが棄却されたので、国税服審判所長に対し審査請求したところ、同審判所長は、前記更正処分及び加算税の賦課決定処分の一部を取り消し、同表の審査裁決欄記載のとおり裁決した。

2  原告は、前記更正処分(但し、裁決により一部取り消された後のものをいい、これを以下「本件更正処分」という。)のうち、所得額一二億〇〇七七万一七二九円、税額五億一九七三万五七〇〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」という。)について不服であるから、その取消しを求める。

二  請求原因に対する認否

請求原因1の事実は認める。

三  被告の主張

1  本件更正処分の適法性

(一) 原告の本件事業年度の所得金額は次のとおりである。

(1) 修正申告所得金額 一二億〇〇七七万一七二九円

右は、原告が被告に提出した修正申告書記載の所得金額である。

(2) 土地譲渡益計上もれ 二六四五万五八五六円

原告は、本件事業年度中に別表二記載のA土地欄記載の原告所有の甲ないし丁土地とB土地欄記載の二俣文雄外五名所有の甲'ないし丁'土地とをそれぞれ交換したが、右はそのうち丙土地の譲渡益一九九六万〇八一五円と丁土地の譲渡益六四九万五六七一円との合計額である。右丙土地の譲渡益は、原告が、丙土地と丙'土地との交換により譲渡した丙土地の譲渡価額三二二〇万七五〇〇円から、丙土地の帳簿価額一一四四万七三一五円と右交換譲渡に要した費用八〇万円を控除して算出した額であり、右丁土地の譲渡益は、原告が、丁土地と丁'土地との交換により譲渡とした丁土地の譲渡価額一〇四六万五〇〇〇円から、丁土地の帳簿価額三七一万九三二九円と右交換譲渡に要した費用二五万円を控除して算出した額である。

(3) 所得金額((1)+(2)) 一二億二七二二万七五八五円

(二) 交換特例の適用について

(1) 原告は、本件事業年度の確定申告期限である昭和六一年九月一日、丙土地と丙'土地及び丁土地と丁'土地の交換(以下、両交換を併せて「本件交換」という。)について、法人税法五〇条一項(以下「交換特例」という。)の規定を適用し、取得した丙'及び丁'土地(以下「本件取得資産」という。)の帳簿価額を一部減額し、右減額した金額を損金の額に算入して、同確定申告をした。

(2) 税法上は交換も譲渡の一形態であるから、本質的に差益金について課税問題が生ずる結果となるが、同一種類の固定資産を交換したような場合には、同一資産が経済的にみれば継続して保有されているとみることもできるため、一定の条件に適合する交換に限り、交換差益についての課税の繰延べを図るという目的で、圧縮記帳方式による旧帳簿価額の引継ぎを認めるという趣旨の下に、交換特例が設けられた。

このような交換特例の趣旨から、その適用を受けるためには、本来譲渡資産と同一種類の資産を取得しなければならないことはもちろん、同一用途に供することが必要である。同一用途に供したか否かの判定については、法人税基本通達一〇-六-七が存し、それによれば、交換資産が土地の場合には、「その現況により、宅地、田畑、鉱泉地、池沼、山林、牧場又は原野、その他の区分により判定する。」とされている。したがって、本件交換について交換特例が適用されるためには、本件取得資産の用途が、丙及び丁土地(以下「本件譲渡資産」という。)の譲渡直前の用途である宅地と同一であることが必要である。

ところで、法人税法上、「宅地」の定義は存しないが、土地の地目を定めた一般的な規定として不動産登記法施行令三条(地目)があり、同条が規定する「宅地」について、不動産登記事務取扱手続準則(昭和五二年九月三日法務省民第四四七三号通達)一一七条は、土地の現況及び利用目的に重点を置き、部分的に僅少の差異が存するときでも、土地全体としての状況を観察して定めるものとし、「宅地」とは、「建物の敷地及びその維持若しくは効果を果たすために必要な土地」をいうものと規定している。更に、同準則一一八条七号は、遊園地、運動場、ゴルフ場及び飛行場について、「建物の利用を主とする建物敷地以外の部分が建物に付随する庭園に過ぎないと認められる場合には、その全部を一団として宅地とする」が、「一部に建物がある場合でも、建物敷地以外の土地利用を主とし、建物はその付随的なものに過ぎないと認められるときは、その全部を一団として雑種地とする」旨規定している。

交換特例の適用における取得資産の地目の判定に当たっては登記地目ではなく、その現況によるべきことは前記通達のとおりであるところ、地目の判定基準について特段の定めのない法人税法にあっては、交換特例上の「宅地」の判定について右準則と異なる取扱いをすべき格別の理由もないから、右準則によることが相当である。したがって、本件において、ゴルフ練習場として利用するため本件取得資産を改造するものとしても、ゴルフ練習場は、その土地利用形態から、仮に施設として建物が必要であるとしても、その敷地としての利用に供しない、より広い土地の存在が不可欠であって、建物は付随的なものであるから、右準則に照らして本件取得資産が宅地ではなく、雑種地とされることは明らかであり、前記通達の「その他の区分」に該当し、宅地とはなり得ない。そうである以上、本件取得資産は本件譲渡資産と同一用途に供されないのであるから、交換特例が適用されないことも明白である。

なお、原告が、掛川市から、本件ゴルフ練習場の完成後は、固定資産税について宅地なみ課税をする旨の通告を受けているとしても、宅地なみ課税とは、近隣宅地の固定資産税との均衡を図るという課税の衡平の見地と、土地対策上の観点から、宅地と均衡のとれた課税を行うというものであって、課税される土地が現況宅地というものではないのである。完成後のゴルフ練習場が現況宅地であるとすれば、現況に即してそのまま宅地として課税すれば足りるのである。

(3) また、同一の用途に供する時期については、基本通達一〇-六-八が存し、それによれば、原則として、「交換の日の属する事業年度の確定申告書の提出期限まで」とされ、例外的に、「取得資産が譲渡資産の譲渡直前の用途と同一の用途に供するため改造等を要するものであるときは、法人が右提出期限までにその改造等の発注をするなどその改造等に着手し、かつ、相当期間内にその改造等を了する見込みであるときに限り、右提出期限までに同一の用途に供されたものとして取り扱う。」とされているのであり、改造等を行い得るか否か不確実な場合にまでも交換特例を適用して課税の繰延べは認められないというべきである。

これを本件についてみると、原告は、昭和六〇年一二月二三日、静岡県都市住宅部長及び同農地森林部長に対して、本件取得資産を含む三万二九二五・〇一平方メートルの土地についてゴルフ練習場の造成を目的とする都市計画法に基づく開発行為予備審査依頼書を提出した。これに対して、静岡県都市住宅部長は、昭和六一年一〇月二〇日、原告に対し、排水計画、造成計画については、開発許可技術的指導基準に適合するよう計画し、開発区域の設定について再検討し、開発区域内の土地の権利関係を明確にすることなどについて、それぞれ解決し又は協議すべき者との協議が成立した場合には開発許可申請書が提出できる旨の開発行為予備審査結果を通知した。原告は、平成元年四月一〇日、開発区域を三万〇八六八・六四平方メートル(以下「本件開発区域」という。)に縮小して開発許可申請書を提出し、静岡県知事は、平成二年七月七日、右申請を許可した。原告は、平成三年一月一〇日、鹿島建設株式会社横浜支店との間で、掛川ゴルフ練習場造成工事についての工事請負契約を締結し、その頃本件開発区域の造成工事に着手した。このように、原告は、本件事業年度の確定申告の提出期限である昭和六一年九月一日までに本件取得資産を本件譲渡資産の譲渡直前の用途と同一に供しておらず、また、右提出期限までにその改造等の発注をするなど、その現実の改造等に着手した事実もなく、かつ、相当期間内にその改造等を了する見込もなかったというべきであるから、前記基本通達一〇-六-八に照らしても、交換特例の適用はない。すなわち、原告が確定申告期限までに行ったのは、開発行為予備審査依頼書の提出のみであり、右提出時点においては、開発許可申請がなされるか否かはもとより、その許可を受けて造成工事に着工できるか否かについても不確定である上、本件取得資産に隣接する本件開発区域内の土地の殆どについては、昭和六一年九月一日の時点において買収のための契約が締結されておらす、開発行為予備審査依頼書提出の段階では開発区域内の権利関係すら明確になっていなかったばかりか、農地転用許可等他法令上の許認可の見通しさえ立っていなかったのである。

(4) 以上から、本件交換に交換特例を適用する余地はない。

(三) 右所得金額は、本件更正処分における所得金額と同額であるから、本件更正処分は適法である。

2  本件賦課決定処分の適法性

本件更正処分により増加した原告の納付すべき税額一二〇四万円(国税通則法一一八条三項の規定により一万円未満の端数切捨て)に同法六五条一項(ただし、昭和六二年法律第九六号改正前のもの)に基づき一〇〇分の五の割合を乗じて賦課決定した本件賦課決定処分は適法である。

四  被告の主張する認否及び原告の反論

1  三1(一)(1)は認める。

2  同1(一)(2)のうち、原告が被告主張のとおり各土地の交換をしたこと及び本件譲渡資産の譲渡価額は認める。

3  同1(一)(3)は否認する。

4  同1(二)(1)は認める。

5  同1(二)(2)ないし(4)、同1(三)、同2の主張は争う。但し、同1(二)(2)のうち、本件譲渡資産の譲渡直前の用途が宅地であったこと及び(3)のうち、本件ゴルフ練習場のための敷地造成工事に要する開発行為予備審査依頼書の提出から、造成工事の着手までの経過は認める。

6  交換特例の適用について

(一) 原告は、被告主張のとおり、開発行為予備審査依頼書の提出、同結果の通知、開発許可申請、同申請の許可等を経て、平成三年一月一〇日頃、本件開発区域の造成工事に着手し、平成四年三月末日をもって、右ゴルフ練習場の敷地造成工事は完了した。

右ゴルフ練習場は、一八〇ないし二〇〇ヤードのいわゆる打ち放しの練習場であり、打席を設置する建物のほか、クラブハウスも併設するものである。

(二) 右事実によれば、前記通達による解釈を前提にしても、原告は本件取得資産の改造により、本件譲渡資産と同一の用途に供したものということができるのであって、交換特例が適用されるべきである。すなわち、

(1) 交換特例における、土地について「同一の用途に供する」とは、不動産登記実務における地目の決定と同一に解すべき理由はなく、取得資産である土地の現実の利用が譲渡資産の土地の利用と実質的に同一であるかという観点から判断すべきであり、前記通達一〇-六-七も一応の基準を示したに過ぎないというべきである。現に登記実務においても、ゴルフ練習場を宅地として登記している事実が存する外、本件ゴルフ練習場用地は、都市計画法上住居地域として指定されており、かつ、掛川市からは、練習場完成後は宅地なみ課税をする旨通告されている。

したがって、改造後の本件取得資産は、譲渡直前の本件譲渡資産と同一用途に供されたというべきである。

(2) また、基本通達一〇-六-八の「当該事業年度の確定申告期限までにその改造等の発注をするなどし」についても、一定規模の開発を伴う土地の改造については種々の法規制が存することは周知の事実であり、しかも改造とは法的に認められる改造でなければならない以上、原告としては、都市計画法に基づき静岡県が制定した開発行為等事務処理要領に従って開発行為予備審査依頼書を提出しなければならないのであるから、原告が右開発行為予備審査依頼書を提出したときをもって、改造等に着手したと解すべきである。そして、原告が右開発行為予備審査依頼書を提出したのは、本件事業年度の確定申告期限前であることは前記のとおりである。

なお、原告が右開発行為予備審査依頼書を提出した段階では、本件開発区域内の土地のうち本件取得資産以外についてはその権利関係が明らかではなかったが、それは、当時すでに土地所有者らは原告に対して譲渡する旨の意向は示していたが、それらの者らは開発行為に真剣な業者であることを確認して初めて確定的に譲渡するのであり、したがって、それらの者らも開発行為予備審査結果通知を受けたのち半年程の間に原告に所有権移転の仮登記に応じているのである。更に、開発行為予備審査結果の通知から開発許可申請までに期間を経過しているが、それは旧国鉄の所有地の法面切削範囲の協議が民営化の時期と重なったために長期間を要したことによるのであって、いずれにしても、開発行為予備審査依頼書を提出したときをもって、改造等に着手したものと解することの妨げとなるものではない。

また、前記のとおり、開発行為を伴う土地の改造については、種々の手続を要し、相当期間を要するのであって、本件の場合には都市計画法上求められる条件がいろいろあったために相当期間を要したものであるが、それはいずれも原告の責によるものではなく、かつ、本件においては、都市計画法の手続を順次履践さえすれば、工事は必ず完成する状況にあり、現に、平成四年三月末日には敷地造成工事が完成しているのであるから、前記基本通達がいう「相当期間内にその改造等を了する見込があるとき」にも該当すると解するべきである。

第三証拠

記録中の証拠目録記載のとおりである。

理由

一  請求原因1の事実は当事者間に争いがない。

二  被告の主張1について

1  被告の主張1のうち、原告の修正申告所得金額、原告が被告主張のとおり各土地の交換をしたこと、本件譲渡資産の譲渡価額については当事者間に争いがない。また、本件譲渡と資産の帳簿価額並びに本件交換に要した費用については、原告において明らかに争わないから自白したものとみなす。

2  そこで、本件交換について交換特例が適用されるか否かにつき判断する。

(一)  本件譲渡資産の譲渡直前の用途が宅地であったこと、並びに、原告が、本件取得資産を含む区域につき、開発行為予備審査依頼書を提出したのち、鹿島建設横浜支店が造成工事に着手するまでの経過については、いずれも当事者間に争いがない。

また、証人杉山博志の証言及びそれにより真正に成立したと認められる甲第二四ないし二六号証、弁論の全趣旨により真正に成立したと認めるられる甲第三〇号証、三一号証の1ないし12並びに弁論の全趣旨を総合すれば、本件ゴルフ練習場敷地の造成工事は、平成四年三月三一日工事を完成したが、本件ゴルフ練習場が完成すると、幅員約六八メートルの打席の側面から前方約二〇〇メートルにわたり支柱が立ち、その上面や側面がネットで覆われて場外への打球の飛び出しを防ぐことになるほか、その外部に、緑地、駐車場等が配される。右打席は二階建てで五二席が設置され、ネットに向かった前方は開放されるが、それ以外は壁、屋根、床で囲まれクラブハウスが併設される(以下、これを「本件施設」という。)。その他敷地内には機会室兼倉庫が建てられるが、開発区域全体に占める建物の面積の割合は三パーセント程度であることが認められる。

(二)  そこで、用途の同一性につき検討する。

交換特例が、同一種類の固定資産を交換した場合には、経済的にみて同一資産が継続して保有されていると評価して、一定の条件に適合する交換に限り、交換差益についての課税の繰延べを図り、圧縮記帳方式による旧帳簿価額の引継ぎを認めた制度であるから、交換特例の適用を受けるためには、譲渡資産と同一種類の資産を取得し、かつ、取得資産を譲渡資産と同一の用途に供することが必要である。この譲渡資産と取得資産の用途が同一というためには、右交換特例の趣旨に照らすと、譲渡資産の譲渡直前の用途と取得資産の現況における用途とが同一であることが必要である。そして、法人税法上、土地の用途の同一性の判定基準に関する規定は存しないが、法人税基本通達一〇-六-七によれば、交換資産が土地の場合には、その用途の同一性は、その現況により、宅地、田畑、鉱泉地、池沼、山林、牧場又は原野、その他の区分により判定すべきであるとされている。交換特例が課税処分の可否を決する制度であり、画一的、衡平に適用されなければならないことを考慮すると、土地の用途を定型的に区分してそれを判定する右方法は相当なものと認められる。

ところで、右基本通達は、右宅地等の区分の判定基準については何ら触れていないが、不動産登記における地目が、土地の現況及びその利用目的等を勘案して決定されることからすれば、交換特例における前記区分の判定についても、その趣旨に反しない限り、不動産登記における地目の決定基準に準じて判定するのが合理的である。そして、不動産登記実務において、宅地とは、「建物の敷地及びその維持若しくは効果を果たすために必要な土地」であり、それら地目の判断は、部分的にみれば土地の現況及び利用目的に僅少の差異が存するときであっても、土地全体としての状況を観察して定めるべきであるとされ(不動産登記事務取扱手続準則<昭和五二年九月三日法務省民三第四四七三号通達>一一七条)、したがって、運動場、ゴルフ場等については、建物の利用を主とする建物敷地以外の部分が建物に付随する庭園に過ぎないと認められる場合には、その全部を一団として宅地と認めることができるが、その土地の一部に建物がある場合でも、建物敷地以外の土地利用を主とし、建物はその付随的なものに過ぎないと認められるときは、特に、道路、溝渠等により建物敷地として判然と区分できる場合を除いて、その全部を一団として雑種地と認めるのが相当であるとされている(同準則一一八条七号)。そして、本件において、用途の同一性をこのように右準則の地目の決定基準を準用して判定することが交換特例の趣旨に反するとの事情を認めることはできない。

(三)  そこで、原告が主張するとおりの本件ゴルフ練習場が完成したものとして、本件取得資産の用途が、本件譲渡資産の譲渡直前の用途である宅地と同一性を有するか否かについて検討するに、本件取得資産が本件ゴルフ練習場用地においてどの部分に位置しているかについては本件全証拠によっても明らかではない。しかし、前掲甲第二四号証によれば、前記クラブハウス等の建物敷地部分は、道路等によって他の用地と判然と区分されていないことが認められるから、仮に本件取得資産が右建物敷地部分に相当するとしても、その用途は、本件ゴルフ練習場用地を一団の土地として判断すべきことになる。

一般的に、ゴルフ練習場は、その土地自体あるいはその土地の空間を利用するものであって、打球が場外に飛び出すことによる危険の防止のために練習場の周囲ないし上面にネット等を張ることが必要な場合が多いとしても、打席の周囲の壁、屋根、床等は必ずしも必要的なものではなく(このことは、例えば河原等にそのような施設を有しない練習場が存在することからも明らかである。)、それらの施設やいわゆるクラブハウス等の建物もゴルフ練習場の経営のための付属的施設に過ぎないというべきであるから、ゴルフ練習場は、そのための施設が完全に屋内に設置されるなど特別の事情が存しない限り、原則として建物利用を主とした土地利用を目的とするものではないというべきである。そして、本件ゴルフ練習場の施設の概要は前示のとおりであり、その用途全体に建物敷地部分が占める割合は約三パーセントに過ぎないのであるから、その用地全体を一団の土地として観察するとき、前記不動産登記事務取扱準則によれば、雑種地(前記基本通達一〇-六-七による「その他」の区分)に該当し、宅地に該当しないことは明らかである。

なお、ゴルフ練習場の中には原告が主張するように宅地として登記されているものがあるとしても、それは、当該ゴルフ練習場施設における土地利用状況に基づいての地目の決定であり、また、都市計画法上住居地域に指定されていることや宅地なみ課税をする旨通告されていることは、地目の判定に影響を与えるものではないから、いずれも右判定を左右しない。結局、本件取得資産の用途は、原告による改造を前提としても宅地とは認めることはできないから、本件譲渡資産の用途との同一性は存しない。

3  以上のとおり、本件交換については、譲渡資産と取得資産との用途の同一性が認められない以上、その余の点について判断するまでもなく、交換特例を適用することはできない。

したがって、本件年度における原告の所得金額は一二億二七二二万七五八五円と認められ、右所得金額は、本件更正処分における所得金額と同額であるから、本件更正処分は適法である。被告の主張1は理由がある。

三  被告の主張2について

国税通則法六五条一項(昭和六二年法律第九六号による改正前のもの)に則り、右更正に基づいて納付すべき一二〇四万六〇〇〇円(同法一一八条三項により一万円未満の端数を切り捨て)に一〇〇分の五を乗じて得た額である六〇万二〇〇〇円の過少申告加算税を賦課した本件賦課決定処分も適法である。被告の主張2も理由がある。

四  結論

以上のとおり、原告の請求はいずれも理由がないから棄却し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 吉原耕平 裁判官 安井省三 裁判官 水野智幸)

別表一

課税処分の経緯

〈省略〉

別表二

〈省略〉

〈省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例